ヘッダー
News 線 Introduction 線 Staff 線 Colum 線 Books 線 Link 線 Buy 線 To
「追憶の廃墟〜制作にあたって」/監修・大嶋智博


世の中が「ミレニアム」という空騒ぎに浮かれていた6年程前、ようやく普及してきた感のあるインターネットの世界を通じてある一つのムーブメントが巻き起こりつつあった。

ある者は少年時代にやった探検ゴッコの楽しさを忘れられず、ある者はある映画に登場する廃墟の美しさに取り憑かれ・・・

「こんな趣味 人には言えない」と思いつつ、こっそり行っていた廃墟探索のレポートを自分のサイトで発表しだした。

時を同じくして映画やテレビ番組、コミックなどでも廃墟を扱ったものが増えだした。
世紀末、不景気感、暗い世相とマッチしたのだろう。

そんなある日、「萬」というサブカル雑誌が「廃墟の魔力」という特集を組んだところ、話題を呼んで、なんと1万部以上のヒットとなった。続いて写真家・小林伸一郎氏の写真集「廃墟遊戯」が2万部を超すベストセラーに・・

ネットの拡がりとともに、それまで形を潜めていた廃墟ファンが少しずつ繋がりだした。

期は熟し、のちに「廃墟」ブームと呼ばれる時代に突入した。

カムアウトする者は続出し、最初は15件程だった「廃墟系webサイト」は現在ではその数十倍に広まった。

そしてその中心にいた「廃墟エクスプローラー」管理人・栗原 亨によるガイドブック「廃墟の歩き方」は3万部を超えるヒットとなり、現在もベストセラーとして売れ続けている。

廃墟を扱った書籍、写真集、DVDは他にも多数リリースされ、実在の廃墟をモデルにしたホラーゲーム「SIREN」シリーズ(SCE)もヒット、今春映画化され話題となった。

はじまりから6年経った現在、ブームといわれた時代は終わりを告げたが、廃墟はアート・サブカルチャーの一ジャンルとして根強い人気を獲得し、現在に至っている。

本作「追憶の廃墟 THE LOST PLACE」は、廃墟ブームの最中に多くのファンから支持された「物件」のみを、激選して収録したはじめてのDVDである。

廃墟の美しさが際だつ自然光を生かし、数多い廃墟映像作品の中でも初となる全編ハイビジョン撮影で手がけたのはショートムービーシーンで注目され、現在では劇場作品まで手がける話題の
映像制作集団「Naked」

監修とコメントは廃墟ブームの初期から自身のwebサイトで探索レポートを発表していた「でぃびぃ。」こと
放送作家・大嶋智博

さらにジャケットに写真集「廃墟ノスタルジア」並びに「廃墟の歩き方」シリーズのビジュアルが話題となった
写真家・三五繭夢を起用

すでに取り壊され、現存しない「物件」も含まれており、まさに完全永久保存版といえる。
【廃墟ブームの原点】/文・大嶋智博


昨今のブーム以来、「廃墟」は大きく括られがちだが、実はファンの生態は様々である。

とにかく廃墟を探索するのが好き! という冒険家タイプ
元々、建築が好きで建築物という観点から考察するタイプ
朽ちた美しさに魅せられ、とにかく写真に納めるタイプ

といったように分類できるのだが、そのタイプによって好みの「物件」のタイプも違ったりする。

今回のDVDの収録物件でいえば、冒険家タイプは雑食でどんな「物件」でも出向くが、亡き「小曲園」のような大きくて調査しがいのあるところを特に好む傾向がある。

逆に建築好きからすると、検見川無線所のようなところが好まれる。

特に検見川は戦前の有名建築家の作であったりするので、資料や他の同時期の建築物(not廃墟含む)と比較したりしながら語られることが多い。

写真好きからすると浅間モーターロッヂなどになるのだろう。実際、直接廃墟と関係のない写真グラビアのロケ地で使われたり、スピッツのヒット曲「スターゲイザー」のプロモーションビデオでロケ地に使われるなどその筋では有名な場所だ。

で、廃墟好きには今の3つのタイプの他にももう一つ大きな派閥が存在している。

それは「鉄道マニア」タイプだ。

鉄道マニアは専門誌も多数発行されたり、イベントが多く行われたりしているのを見てもわかる通り、 かなりの数がいるオタク界の大派閥だ。

ここも「廃墟」と同じように様々なタイプに分類できるのだが、最近そこで勢力を拡大しつつあるのが、廃線マニアだ。

自動車の普及や過疎化など今回のDVD内でも語られた原因により、60年代以降全国各地で鉄道の廃止が相次いでいる。

大方は廃止後、数年のうちに撤去されてしまうのだが、場合によってはその費用が負担できなかったり、地域ごと放棄されてしまったりといった事情で線路や駅、場合によっては車両などまでが残されている場合がある。

そうしたレールの軌跡を追い求めて、廃線跡を旅する人が多く存在するのだ。

今回のDVDでも奥多摩湖ロープウェーを収録している。あれは厳密には鉄道ではないのだが、もう二度と走ることのない車両・設備から往時に想いを馳せる・・
そんな部分に浪漫を感じる人が多いのだとも言える。

「廃墟」と「鉄道」両方のファンを跨ぐ一大ジャンル「廃線」
これは廃墟には興味があるけど、まだあまり行ったことがない・・
という人にこそお勧めする「物件」だ。

それはなぜか?
それは廃線跡探訪は「廃墟」のそれよりも圧倒的に難易度が低いから

少し古い地図を調べたり、地元の人に聞けば場所を見つけるのも容易だし、写真を撮るにしても絵になりやすい。

残念ながら亡くなられてしまったが宮脇俊三さんが
手がけたJTB「鉄道廃線跡を歩く」シリーズや、
角川文庫「鉄道廃線跡の旅」といったガイドブックも多数出版されているので、情報も多い。

またネット上にも情報サイトが多く存在している。

例えば自転車・バイクで廃線跡を訪ねて廻り、そのレポートを掲載している
Rail&Bikesというサイトなどは道のりや注意点も掲載されていて、非常に参考になる。

春は旅をするのに最適な季節

あなたも夢のレールの跡を旅してみてはいかがだろうか?

『日本ゲーム史における廃墟』


2003年に発売された家庭用ゲームに、実在の廃墟や廃屋の映像を取り込み、CG加工を施すことによって、今までに無い臨場感と恐怖感を実現した大ヒットホラーゲームがあった。その名を『SIREN』と言い、ゲームファンだけでなく廃墟マニアの間でも大きな話題となった作品だ。

この作品のおかげで、今では『廃墟とゲーム』と言えば『SIREN』という事になってしまっている感があるのだが、実はそれ以前にも廃墟に重要な意味を持たせたゲームは数多くあった。

この記事ではこうした『日本のゲーム史に登場した“名廃墟”』を紹介していこう。

※ 厳密に言えばRPGなどに出てくるダンジョン(洞窟、塔、ピラミッドなど)は全て廃墟と
呼べるのだが、ここではゲーム中でも『廃墟』として登場した場所のみに限定する。


<廃墟になった町>
最も有名な物件は、なんと言っても『ドラゴンクエスト1』に登場した『ドムドーラの町』だろう。朽ちた建物と毒の沼、そしてそこに隠されている最高の防具『ロトの鎧』と、それを守る『悪霊の騎士』という強敵。大ヒットゲームだけに、今でも強く印象に残っていると言う人も多いはず。

実はこの『ドムドーラの町』は、作中で魔物に襲われて廃墟になったという話が語られている事もあり、廃墟マニアが廃墟に求める「廃墟になるまでのプロセス(歴史)」や、廃墟には何かが隠されているかもしれないという「探究心」を満たしている、非常に魅力的な物件なのである。このドラクエ1以降のRPG(ファイナルファンタジーなど)にはお決まりのように「廃墟化する町や城」が登場しており、そういった場所には必ずといってよいほど強敵が潜んでいたり、重要なアイテムが隠されていたりする。そういった意味で『ドムドーラの町』は、ゲームに登場した「実在の廃墟と同様の魅力を兼ね備えた廃墟物件」の先駆者的存在なのだ。


<閉鎖された施設>
『イース1』に登場した『廃坑』などが代表的だろう。以前は鉱山として多くの労働者達がいたはずなのだが、いつからか魔物が徘徊するようになって、今では閉鎖されて誰も近寄らなくなってしまった。そんな背景を持つこの物件は、主人公の周囲のわずかな空間しか見渡せず、実際の廃墟と同様の「暗さ」や「閉鎖感」がよく再現されている。

また『真・女神転生3』に登場した『地下鉄の駅』も、廃墟マニアにとって大変素晴らしい物件である。ここは普段は人で溢れる場所なのだが、後に人の代わりに悪魔が溢れるようになってしまい、巨大な閉鎖空間と化してしまう。そして主人公はそんな危険な線路を歩いて次の目的地を目指すこととなる。ちなみにこの『真・女神転生3』は、全体的に終末感や退廃的なイメージで統一されており、さらに冒険の舞台となる場所がすべて3DCGで描かれているため、全編通して「廃墟探検気分」を思う存分味わうことが出来る逸品である。


<魔物の住みか>
古くは『悪魔城ドラキュラ』の『廃城』であったり『バイオハザード』のステージ全般がこれにあたるのだが、やはり廃墟マニアとしては先にも挙げた『SIREN』の名を出すべきだろう。私自身が『SIREN』の舞台となった場所を訪れたことがあるためか、このゲームを遊んだ時の恐怖感は並大抵ではなかった。特にとある廃村にゾンビが徘徊していたシーンが今も強く印象に残っている。現実世界では夢中でシャッターを切っていた美しい場所だったのに、ゲーム中では死の恐怖に支配された魔界と化しているのだ。この奇妙な感覚はしばらく忘れられそうにない。ちなみに蛇足になるが、この『SIREN』にはTVCMが「怖すぎる」という理由で放送中止になったという逸話がある。ホラーゲームとしては勲章のような伝説だ。


<無人の閉鎖空間>
大ヒットしたサウンドノベル(小説風アドベンチャー)ゲーム『弟切草』の舞台となる『無人の洋館』などが代表的。廃墟的な空間で魔物と戦う、もしくは襲われて逃げるというゲームは数多いのだが、このゲームにはそういった「敵キャラ」は存在せず、「壁から血が出る」「無人のはずなのにどこからか音がする」といった、心理的ホラー描写が主となっている。そういった意味では「廃墟の持つ恐怖感」をもっとも的確に表現しているゲームといえるかもしれない。

またゲームではなくアトラクションになるが、昔から遊園地の名物として認知されている『お化け屋敷』も、分類するならここに入れるべきだろう。極論になるかもしれないが、ボロボロの廃屋に忍び込んで恐怖体験を味わうという『お化け屋敷』の流れを、TV画面で手軽に楽しめるようにしたのが『探索系のホラーゲーム』であり『RPG』なのだ。そういった意味では、実はこの『お化け屋敷』こそ、ゲームと廃墟の橋渡し的な存在なのである。


<遺跡>
知名度だけを考えたら有名どころの『アトランチスの謎』の舞台となる『アトランチス遺跡』を挙げたいところだが、このゲームは遺跡内でダイナマイトを投げて敵や障害物を排除するという、温厚な廃墟マニアとしては我慢ならない物騒な作品のため、この場ではちょっと除外させていただきたい。(破壊衝動を持つ廃墟マニアの願望が現れていると無理矢理にこじつけられなくもないのだが…)


という訳で、少々マイナーになるが日本ファルコム社の隠れた名作『太陽の神殿』を例に挙げたい。この作品はピラミッドや古代遺跡などを舞台にした、超難解推理アドベンチャーゲームである。主人公は失われたマヤ文明の秘密を探るため、メキシコの『チツェン・イツァ遺跡』を探検することになる、というのが大まかなストーリー。プレイヤーは失われた文明に思いを馳せつつ、実在する『チツェン・イツァ遺跡』そのままの配置、外観を再現したマップ内を探検して回るのだ。『遺跡』とは長い時間を経た『廃墟』であるから、これぞまさに「廃墟探検」そのものを表現したゲームだと言えるだろう。

さて、簡単に『日本ゲーム史』に登場した代表的な廃墟を振り返ってみたが、こうしてみると『廃墟』とは実に『ゲーム的』な存在だと理解していただけたと思う。

一見興味のない人間には理解し難いように思える『廃墟』でも、実際に触れてみると思いのほかすんなりと受け入れられてしまう背景は、意外と「予めゲームで予習していたから」という要因によるものなのかもしれない。